くのみこめないような論文などを雑誌にのせる時には、読者への責任という点で考えこまざるを得ない時があります。ですから、いいじゃないですか、その単純なところで書いてください」
「でよければ、書きます。しかし一カ月だけなら、イヤです。悪口も書きますから、一回コッキリで書くと、イタチの最後ッペみたいになって、卑怯でもあるし、言いたりないし、それに私の本意にも添わぬことになりますから、五、六カ月間、私の好き自由なことを書かせてくださるなら書きましょう」
「けっこうです。で、どんな事を書いてくださいます?」
「この十年あまり、ぼくらは、いろんな物を食わされて来ました。あまり食いたくないものも、食わされて来ました。すこしちがった意味で、現在もそうです。胃の腑が妙なふうになっています。なんとかしないと、気分が悪いし、カラダのためにも良くない。それには、吐くのが一番だろうと思います。いきおい、私の書くことは、ヘドないしは、ヘド的になりますよ。どうせキレイなものではない。ただ吐きっぱなしにはしたくありません。吐いた物の中にも、もう一度洗って煮て噛んで、のみこんで消化すれば滋養になるものが、まじっているかも
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