放される者の中に僕自身が加わることになったとしてもだなあ! われわれは、これをもって――(昂奮して、バラバラと涙を流し、火の出るような語調と完全にしんけん率直な態度)摘発する! 私は摘発する! 日本を、日本の映画界を真に愛すれば愛するほど――摘発せざるをえない! これは文化人としての責任である。文化人としての良心である!良心をごまかすことはできない!良心をごまかしていれば、永遠にテッテイ的にわれわれは腐敗します! 摘発はテッテイ的に冷静無慈悲なものでなければならぬ!(卓をドシンとたたく)
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(その時、写真班の記者がパンとマグネシウムをたく)
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トンコ (久子の腕の中でびっくりして)ウオーウオーン。
三芳 かくのごとくなってきた情勢の中で、われわれは、われわれ映画人が、かつて犯していた罪悪が、いかに兇悪なものであったということを、今さらながら、いな!今までのどのような場合よりも百千倍も強く身にヒシヒシと痛感するのである!
ツヤ ゲエ!(吐く)
久子 どうしたの、あんた!
ツヤ ゲエ!
トンコ ウオーン!
三芳 それを思うと、泣いても泣ききれず、くやんでも、くやみたりません! 私どもの思想上の転換は、心底からの――日本人としての真の自覚である。どのような意味ででも外部の力から強制されたものではない! また、あってはならない。われわれは今ここに、われわれの自己反省、自己批判として映画界の戦犯を一々その名前をあげてその追放と退陣を要求するのであるが――なるほど、これは、情において忍びざるものがあるけれども、この際、ダンコとしてこれをあえてなすにあらずんば、この、日本映画をして、真にダンコとして――
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(ツヤ子の嘔吐の声とトンコのほえ声とを伴奏として、三芳の熱弁はつづく)
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[#地から1字上げ](幕)
底本:「三好十郎の仕事 第三巻」學藝書林
1968(昭和43)年9月30日第1刷発行
初出:「風刺文学」
1947(昭和22)年9月号
入力:伊藤時也
校正:伊藤時也・及川 雅
2009年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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