々先生の方へルイを及ぼすような事は絶対にいたしませんから、どうかひとつ。なにしろ、われわれの方は技術者ばかりで、ただこの文化的に立派な、つまり戦力増強に真に役立つような作品を作りさえすればよかろうと言うんで、経営方面はカラダメでして、がんらい、映画評論やなんかでやってきた私などが、こうして企かくや製作のことで、駆けまわっているありさまなんですからねえ。他は推して知るべしで、たとえば、借りているスタジオの家賃がたまって追い出されそうになったりしてまして――なんとか早くネガを手に入れて金の運転をつけないと、私ども、どうして食って行ってよいか、路頭に迷うことになって――
大野 そりゃ、しかし、そこまでの尻をわしらの方へ持ってこられても、どうしようもないねえ。
薄田 まあ、ええじゃないか大野君、なんとか、はからってやるさ。君たちがつかまえて転向さしてやったんだからなあ、あとのめんどうも見てやらんと、またヨリがもどる。口をきいてやったらいい。
大野 そりゃ、そうですがねえ、あんまり度々で――。それに、とにかく、どんなに小さくとも、営利事業ですからねえ。
薄田 骨折賃はもらうさ。それは当然じゃからね。(三芳に)ハハ、君たちも、この、すこし要領が悪いんじゃないかね? コンミッションというと人聞きが悪いが、自分だけもうけてだな、他にキンテンするということを忘れていては、おもしろい戦さはできんぞ? どうだえ? また、なんだよ、それ位のことに小さくこだわっていて戦力増強の仕事を停滞させるのは、今となっては、かえっていかん。ほとんど、それは罪悪じゃ。すべて大局からみて、国家総力のために役立つと見れば小節にコウデイしたら、いかんよ!
三芳 はあ、あの、それは――失礼ですが――その点は、私どもの間でも――なんです、十分になにして――
大野 そんな事は困る。そんなふうに考えられたら、だなあ――
薄田 まあまあまあ!(と大野をおさえて)いいじゃないか、ね三芳君?
三芳 どうも、ありがとうございます。なにしろ、こいつ、われわれの死活問題なものですから、はあ。どうか、大野先生、よろしくお願いします!
大野 そんな事は、君、問題じゃないんだ! 私の立場としてだな、この、仏の顔も三度と言う――
薄田 よし、きまった! きまった、きまった!ハハハ、よしよし! 大野君、ヤボな顔をするのは、よしたまえ! さあ
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