「う訳ですから、ゴーガンさん、お願いです。どうか一つ――兄を説きつけることの出来るのは、あなただけなんです。兄はあなたを怖れています。いや怖れていると言うわけではないんですが、つまり尊敬しているのです。一番頼りにしているのです。あなたのおっしゃることなら、何でも兄は聞きます。忠告してほしいんです。お願いですから――このままで行けば兄の頭はどうにかなってしまいます。兄は病人なんです。どうか、ゴーガンさん、あなたの力で――
ゴー フフ。(笑うが、顔は笑わない)私は看護婦じゃないよ、テオドールさん。……(所内を見わたして、ロートレック、ベルナール、ベルト・モリソウ、タンギイなどを目に入れるが、別に目礼もしないで、売台の所のおかみを見て、初めて微笑)やあ今日は、クサンチッペ。
おかみ いらっしゃいまし、ゴーガン先生。(このおかみはゴーガンを見ると妙に機嫌が良い)
ロート そうら、お前の色男が来たぞ! 見ろ、トタンにニヤニヤしやがって。
ゴー どうしたね、伯爵?
おかみ いやだと言うのに、どうしても飲めとおっしゃるんですよ、このブランディ。
ゴー そうかね。(と瓶を取って)のどがかわいた。……(
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