ィ掛けんなって。(椅子をすすめる)
ベルト ありがとう。どうぞお構いにならないで――いえね、これから御一緒にタンボランの展覧会に行くんですの。エミールさんが、御主人の肖像をゴッホさんが描いているから、寄って見て行こうとおっしゃってね――これですわね。(「タンギイ像」に目をやる)
ロート いよう、やっちょる。(言いながら、ステッキを突きヨロヨロとびっこを引いて絵の方へ行く)……なんだ、もう出来あがってる。
エミ 一撃で描く。そう言うんですよ、いつも。実際、一昨日は半日かからないで、これだけ描いてしまったんです。筆がまるで刃物みたいだ。見ていて、僕は怖くなる。……
タン いかがなもんでしょうかな、絵の出来ばえは? 家内は、あんまり私に似ていないと言いますがな……(三人の画家は絵ばかり見て、相手にしない。しかたなしにおかみに)ええと、お前、お客さま方にコーヒーさしあげてくれ。
おかみ え? ……(ムッと怒ってタンギイを睨みつける)
ロート コーヒーなんて、堕落した飲み物を、わしが飲むと思うのか。わしは――(とポケットからブランディの瓶を出してラッパ飲み。しかし目は「タンギイ像」から離さない)
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