そうだよ、お祈りをあげてやらねえじゃ、シモンは坑内に埋まったまま、いつまでたっても天国に行けねえからね。
デニス そ、そうじゃねえってば! (叫ぶ)俺の言うのはだな、バコウの小母さん!
アンリ ハハ、駄目だデニス。ソッとして置きなよ。
老婆 ホホ、ホホ、そうだよ、だからね、やっとまあローソクが間に合ったでね。見てごらん、こんな大きなローソクは、死んだ亭主の葬式の時だって使いはしなかっただから……ホホ。(ホタホタと喜んでいる)
デニス 畜生。どうしてこの婆さんは笑えるんだ?
ヴェルネ お前にゃ、おっ母あが笑っているように見えるかデニス?
デニス だって笑ってら。
ヴェルネ 笑ってる。泣くかわりにな。……こうやってお前、六十年、笑って、生きて来たんだ。
老婆 そうだとも。やっとまあ、お祈りがあげられるからなあ。ありがたいことだ。
デニス ……(それを見ているうちに再び頭をかかえこんでしまう)
アンリ ハハ、だがそれにしても、あんまり遅過ぎるなあ。ここの先生? どうにかしたんじゃねえだろうなあ?
ヴェルネ うむ。
アンリ バリンゲルの方であんまりわからねえ話をするんで、喧嘩にでもなったと言う
前へ
次へ
全190ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング