こたあ、炭の筋に当るようにハッパをチャンと仕掛けることだ。なあ、そうだろ、バコウのおっ母あ?
老婆 あん?
アンリ (老婆の耳のそばへ)このなあ、ボリナーヂュ中の人間の命がよ、俺たちの肩にかかっているからなあ、めったなことでかんしゃくを起こしちゃいけねえよなあ! そうだろ?
老婆 そうだそうだ。ここの先生におたの申そうと思ってよ。町の教会までは、おらの足じゃ行けねえからなあ。
ヴェルネ フフ、フフ。
老婆 ここの先生、間もなく帰って来るかね?
アンリ まるでこりゃ、いけねえや。
老婆 (二人が笑うので、自分も歯の一本もない口をあけてニコニコして)……やっとまあ、こうして、あちこちからローソク貸してもらってなあ。へへ、今日はお前、死んだシモンの名付け日のお聖人さまの日だからな、お祈りだけでもあげてもらおうと思ってね。
デニス だって、バコウの小母さん、シモンは爆発で死んだんだぜ、つまり会社のために殺されたようなもんだよ? それを会社じゃ死体を掘り出そうともしねえ、その上、炭坑は閉鎖して生き残っている俺たちまで取り殺そうとしているんだ。お祈りをあげたからって、どうなると言うんだい?
老婆 
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