辷齦熄oて)シィヌさん、私は、あの――
シィヌ ええ、ええ!(振返ってテオの方を見る、酔眼でテオをモーヴだと思っているのである)どうせ、あたしは共同便所ですからね! 臭いでありますよ! 紳士さまがたのお歯には合わないでありますよ! ハハハ、へっ! 何よう言ってやがるんだ! さ、行こう小母さん!
ルノウ 困るねえ!(シイヌに引っぱられながら)ねえゴッホさん!
ヴィン お願いだ、シィヌ! シィヌ!(引き戻そうとする)
シィヌ 石炭酸で、ようく洗いなよ。あたいにゃ病気があるんだから。うつってんだよ、お前さんにも。(ヴィンセントの手を振り切って)絵かきがバイドクになったらなんになるんだっけ? ハハ、ヒヒ!(笑い捨てて、酔っぱらいのクソ力で、ルノウのおかみを引っぱって、ドアの外へドタドタと消える)
ヴィン ……(叩きのめされたようにグタリとして、戸口のわきに立ちつくしている)
テオ……(これも、急には何も言えず、動かない)

[#ここから4字下げ]
――間。遠くで、はしけのホイッスル。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
ヴィン ……テオ。(力なく、こちらへ
前へ 次へ
全190ページ中71ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング