セ笑っているので、びっくりして立って見る)……兄さん!
ヴィン ああ、テオドール! ……(かけ寄って抱く)
テオ どうしたんです?(おかみの方を気にしている)
ヴィン (身体を離して)いつ、来たんだ、テオ?
テオ ヌエネンに行ったんです。パリを一昨日立って。そいで急に、兄さんに逢いたくなったもんだから。
ヴィン よく来てくれた、よく来てくれた。(言いながら、喜んでソワソワと椅子をすすめ)何かね、お父さんやお母さんは元気かね?
テオ (ルノウのおかみに、えしゃくをしてから)元気です。……兄さんのことを心配なすってるもんだから、そいで、僕――
ヴィン ああ――(と先程のモーヴの手紙のことを思い出してテーブルの方をチラリと見て)……すると――そのへんで、モーヴに、君、逢いはしなかった?
テオ すると、モーヴが来たんですね? 何か言ったんですか? 手紙のことを言ってやしませんでしたか、お父さんからの――?
ヴィン 読んだ。君からの手紙も読ましてくれた。
テオ そうですか。いえ、ヌエネンに行って聞くと、お父さんも二、三日前にモーヴあてに兄さんのことを書いた手紙を出したと言うでしょう? 僕も実は五
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