どうを見てあげる。聞いてくれなければ、一切これっきりだ。絵の指導はもちろん、お目にかかるのも、ごめんこうむる。いいかね?
ワイセ ヘヘヘ、フフ!
モーヴ どちらが君自身のためになるか、よく考えて決めるがよい。私の言うことは、それだけだ。いずれとも君の好きなように。
ワイセ ハハ、ヘヘヘ!
モーヴ なにかね、ワイセンブルーフ? 何を笑っている?
ワイセ なにね、いや、説教はそれくらいにして、ここに来てこの絵を見たまい。
モーヴ うん? 得意のミシュレかね?(立って素描の所へ来る)
ワイセ 飲んだくれだけはよけいだが、君は今、絵の良し悪しだけはわかる男だとわしのことを言った。
モーヴ 言ったがどうしたんだ?
ワイセ だから、この絵をよく見たまい。なんなら、もう一度シャッポを脱ごうか?
モーヴ (それまでニヤニヤしていたのが、素描を見るや、スッと笑顔を引っこめる)……ふん。……(ジッと見ている)
ワイセ (これも絵を見ながら)手ひどい絵だ。なんともかんとも、ひど過ぎる。
モーヴ うむ。……(ほとんど嫌悪の表情で絵を見守っている)
ワイセ 美しくもなんともない。むしろ醜悪だ。絵ではない。
モ
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