ェが噛んでいることに気がつく。ピクンとしてゴーガンを見、それからラシェルの立ち去った戸口に目をやる。それから再びパンを見る。見ているうちに急に声をあげて泣き出す。ファランドールやむ。ヴィンセントのオーオーと犬のほえるような泣声だけが残る)
ゴー (びっくりして見ていたが)どうしたんだ?
ヴィン ……(泣き出した時と同様に出しぬけに泣きやんで、ボンヤリ立っている)
ゴー (立って行き)どうしたんだよヴィンセント?(ゴッホの肩に腕をまわして、テーブルの方へ連れて来ながら)まあ、掛けたらいい。急に泣いたりして?(ゴッホを椅子にかけさせ、自分もかける)
ヴィン (いきなり、ゴーガンの手を握って)ポール、俺を許してくれ! 俺が悪かった! どうか許してくれ!(床にひざまずいてしまう)俺は、たしかにどうかしているんだ! たしかに、どうかしていた!(床に額をすりつける)
ゴー (びっくりして)どうしたんだよ全体? そんな――ヴィンセント?
ヴィン 俺にはそんな気はちっともなかったんだ、そんな気はちっともないのに俺の手がひとりでに動いちまった。俺はただ、ミレエが偉大な画家だってことを君にわかってもらいた
前へ 次へ
全190ページ中157ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング