Bああまた、ミストラルが来るなと思った。カンバスがゴトゴトした。そのため木立の色を塗りそこなった。それでパレット・ナイフを取ってけずり取ろうとして、ナイフの刀を見た瞬間に、ゴーガンの顔がナイフの向うからヒョイと覗いた。ゆうべ俺からアブサンのコップを投げつけられて、ジロリとこっちを見た顔だ。眼が軽蔑で光っている。その青い眼だ。……それを見ているうちに、俺はクラクラとしてあたりがすべて白くなり、そして、どこに居るかわからなくなった。遠くで、どこかの鐘が鳴りわたっていた。キリン、カン、キリン、カン、キリン、カン、遠い所で……
ルー さ、これでまとまった。絵の具箱は私が持ってあげます。行きましょう。
ヴィン ありがとう。いいんだ、僕が持つ。(立つが、すこしヨロヨロする)
ルー 大丈夫ですか?(ヴィンセントの片わきを支える)
ヴィン 大丈夫。(七つ道具をさげて立った姿は「製作へ」の中の自画像と全く同じである)
ルー なにしろ、あなたはあんまり詰めて仕事をなさり過ぎる。どうです、一つ、くたびれ直しにジヌーのカッフェで一杯ひっかけて行きますかな? ハハ、なあに、今日は私がおごりますよ。
ヴィン ルー
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