買Bン ……(人がちがったようにノロノロした動作で売台からおりて、ズボンのボタンをかけ、上着に手を通す)……(非常に沈んだ声で)どうして、こうなんだろう僕は? ……ゴーガンは偉い人間だ、たしかに。……ホントだ、僕は昂奮しすぎる。僕が、悪い。……(言いながらユックリ歩いて「タンギイ像」の前に来て、無意識にそれを見ている)ふん。……先は永い……先は永い?(ヒョイとタンギイを見る)……いや、そうじゃない。僕は急がなきゃならない。……(再び「タンギイ像」に眼をやる。片手を前に出して、画面をいろいろにさえぎって見ながら)……トーン? アルモニイか。イマージュ。……(ほとんど無意識に先程投げ出してあった絵具箱の方へ行き、それを抱えて絵の方へ行き、箱を開け、パレットと筆を出して、椅子を引き寄せて絵に向っている)
タン 坐るんですか? 今日は、よしにしといたら、どうですかね?
ヴィン ……(そう言っているタンギイを、既に画家の眼でみつめ、筆が知らず知らずパレットに行っている。タンギイは、それから縛られたようになって、ひとりでに、いつもモデルとして掛けることになっている壁の前の椅子に行って掛けている)

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