ヌこに居るのか俺にはわからない。しかしお前がこれほど俺を愛してくれ、俺がこれほどお前を愛し、してまた、俺はゴーガンやベルナールやタンギイや労働者や百姓や、しいたげられた女たちを愛している。そして俺には絵がある。絵を描くための労働がある。それならばもし神が居ないとしても、何かが居るのだ。
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「黄色い家」
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ヴィンセントの声 テオよ、やっとやっとゴーガンが到着した。彼は元気だ。そして、お前の斡旋で自分の絵の売れたことを喜んでいるし、こちらでは俺が家や部屋など一切のことを、スッカリととのえて置いたので、すぐに気持良く仕事が出来るので、ひどく悦んでいる。俺も勿論非常に愉快だ。生活は今までよりも軽くなる。彼はすぐれた画家だし、面白い人間だ。彼と一緒ならば、俺も彼もともにたくさん仕事が出来るだろう。すべては、実にうまく行きつつある。テオよ、これがゴーガンと俺の住んでいる黄色い家だ。ラマルチーヌ広場にある右がわの二階家で、ルーランの世話で家賃はたった月に十五フラン。俺は家をペンキで黄色く塗った。部屋が四つ有るから俺とゴーガンは、それぞれ自分の寝室を持っている。……テオよ、白状すると、しばらく前から俺は身体の調子が悪かった。食事が不規則なために胃が悪いのと時々頭がボンヤリして意識が薄れるような気がすることがある。外で絵を描いていて、倒れたこともある。俺は何か、ひどく身体が悪くなりそうな気がして、不安で不安でたまらなかった。そこへゴーガンが来てくれた。不安は消えた。いまでは無事に切抜けられる自信を持っている。俺たち二人は一カ月二百五十フラン以上は使わない。ゴーガンは料理がうまい。俺も彼から習おうと思っている。こうして安上りに共同生活しながら、二人でグングンと立派な製作をする! そのうちに、印象派の画家たちや若い画家たちがここにやって来ていっしょに暮し、いっしょに絵を描いてその指導者にゴーガンがなる! 愉快ではないか。ハハ!(神経的に、しかし愉快そうに笑って)ゴーガンは早くも、自分のアルルの女を見つけたらしいよ! 俺も、あれくらいに恋愛の腕があると良いと思うが、しかし俺の手の届くのは風景だけだ。フフ! 俺たちは大いに女郎屋を研究しに行くつもりでいる。毎日、朝から晩まで二人とも仕事仕事で過ぎて行く。夕方になると俺
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