あなたがたをここでとがめようとしているのではありません。たぶんそれは、とがめることのできることがらだと思いますが、私にはその力も資格もないし、またここはそういう場所でもない。それに、戦争をはじめてしまった以上、その戦争のなかで相手を倒すためには、ばあいによって、どのような種類の破壊力でも使用するのは当然または、やむをえぬことだとする考えかたもあるわけですし、またあなたがたは「それでは真珠湾の無警告攻撃はどうだ?」と言うかもしれない。たしかに、それももっともなことです。そのようなことのいちいちを比較計量して断罪しようとしても、いまとなっては意味をなさぬと思います。ただわれわれは、広島と長崎の原爆のことを忘れることができないのです。
 いうまでもなく、私どもはこの記憶を、憎悪や怨恨のために使いたくはない。できるならば、今後の世界と平和と人類の幸福に役だつように使いたい。それがまた原爆被害者達の死や苦しみを無駄にしないためのいちばんの道でしょう。この点ではたぶんあなたも賛成してくださると思います。そのためには、私どもは今後戦争をひきおこす原因になりそうなことを、できるかぎり取りのぞいていくつ
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