大なことの決定にあたっては、それらの責任者たちは、国民から委託された権限の地位からもう一度おりて、あらためて国民の総意を問うだけの手つづきを取るのが至当ではないでしょうか?
 そんなことをしていれば、機密が洩れたり戦局にまにあわないというようなことが起きるでしょうが[#「しょうが」は底本では「しようが」]、それはまた何かの防ぎようがあるのでしょうし[#「しょうし」は底本では「しようし」]、それだけを理由にして、独断によって使用されるものとしては、それらの兵器の効果は巨大にすぎるし、残酷にすぎます。使用された目的と、使用された結果とがバランスを欠きすぎるのです。ある一つの国を負かすのに、その国民をそのようにたくさん、いちどきに殺す必要はないのです。
 たとえば、主人から「犬が吠えてやかましいから吠えないようにしてきてくれ」と言われて、家の近くの犬という犬を一匹残らず打ち殺してきた下僕があったとしたら、どうでしょう? それに似たような、そしてそれよりも何千倍もグロテスクで恐ろしいアンバランスが、このことの中にあるような気がするのです。
 あなたはこの点をどう思われるでしょうか[#「しょうか
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