つくして、こちら側を打ち負かそうとして刻々に動き変化しているために、軍および軍人は、そのときどきの戦局に対処するためには、往々にして、いちいちの執行について、最高の統率者にはかったり、または命令を待ったりする余裕をもたない。まして、国民の代表者である議員や国民自身に相談を持ちかけることは、ほとんど不可能な立場にある。
国民の側から言っても、かりにいちいち相談を持ちかけられたとしても、それにたいして適切な答えを出せるような立場にはいないので、いっさいを軍と軍人に一任して結局は戦争に勝ってくれさえすればよいということになる。つまり戦時における軍と軍人は、やむをえず、かなりの程度まで独断専行を許されるものである。ということは、民主主義というもののいちばん貴重な項目――その国家にとって重大なことを遂行するにあたって、その国家のすべての成員が、それの可否についての討論に参加するという方式――が、戦時には、完全にか部分的にか棚あげされてしまうということである。その意味で戦争は民主主義を麻痺させてしまうとも言える。
戦争というものは、本来的に、そして決定的にファシズム的[#「ファシズム的」は底本
前へ
次へ
全17ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング