考えてくれなかった向うの人たちも、そりゃ、いけなかったと思います。だけど、そりゃ、なんとか話して頼めば、わかってくれると思うんです。それしないで、いきなり、軍隊でよその国をとったりするのは、まちがいでございます。
宗定 なるほど。……わかったわかった。すると、今、わが国がこれだけ総力をあげ、人命をギセイにして戦っているのが、聖戦でもなんでもない、つまり強盗と同じ――侵略戦争なんだね?
友吉 ……戦争は、みんな、よくない事です。
宗定 よしと。……しかしなあ、開戦以来、敵の飛行機はドンドンこっちへやって来て、バクダンを落しているが、日本の飛行機は一機だって半機だって向うの本土には行ってないね? それでも日本のしているのは侵略戦争かね?
友吉 戦争は、だれがしても、どこの国がしても、よい事ではありません。
宗定 一番悪いのは日本だが、しかし日本だけが悪いんじゃないんだな? よしよし。ところで、お前はこうして出征するのをこばんでいるが、こんなことをすると、国家の法律や軍刑法で、どんなふうに処罰されるかという事は、知っておるね?
友吉 はい。……
宗定 知っておると。……それを知っていても、出
前へ
次へ
全180ページ中55ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング