ねえ。……だからまあ、いよいよとなれば軍に引渡してアッサリ処置してもらうんだが、今いった通り、向うも忙しいのと、責任問題で、相手にしたくないんだから、これ、どうなるもんだか――(話しながら、友吉の縄をほどく。友吉は、縄がほどけるとクタクタと、ボロをたたんだように肋木の足もとに坐る。顔はガックリ前に垂れている)……どうしたい?……だからねえ、どうだい、君からなんとかすすめてだなあ、早くこの――だって、この大将をヤソにしたのは、君なんだろう?そんなら、君からいやあ、なんとかなりそうなもんじゃないか?
人見 はあ。それは、先日から、この、口をすっぱくして、なにしているんでございますが、どうしても……
今井 でないとだな、君だって、これで、今に、妙なことにならんとも限らないよ。戦争が、こんなふうに段々と負けが込んで来るとだなあ……うむ、海軍はあらかた沈んじゃった、飛行機の増産も思うように行かん、第一ガソリンがなくなって来たわ、せいぜいあと半年ぐらいで、いよいよ本土作戦――竹槍で、一億総肉弾か。ヘヘ、……といった有様、軍部もドタンバだもん、神経質になっとるからな。ヘタをすると君なんかも、ロクに調
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