、やめてください。僕は、ホントに、お願いします。この――(両手を強くにぎりしめて、いっしょうけんめいにいっているうちに、すこしシドロモドロになって来る)
人見 (自分でも排除しきれない友吉に対する根深い反撥を、つとめて押しかくしながら)君のいう事は、一つの考えとしては正しい。戦争中と同じだ。あの頃とすこしも変って来ていない。……チットも成長していないんだ。ひとつおぼえ……つまり、それは、考えとして正しいかなんか知らんが……実際の、実行上の智恵としては、まるで力がないのじゃないだろうか?
友吉 ええ……僕はボンヤリですから、この――
人見 つまり、そんな事をいっても、誰がそれを実行できるだろう?
友吉 ……あの、僕は、実行できるんですけど――
人見 そりゃ、そりゃまあ、君は実行できる人だ。現に出来たんだから、しかし君のような人は、千人中、万人中、いや千万人の中に一人いるかいないか――とにかく、たいがいの人には実行できない。
友吉 いえ、あの――ほかの人も、僕のようにすればいいんです。(自分がいかに権威ある恐ろしい言葉をしゃべっているかに全く気附かず、ただ子供らしく、額に汗を浮べながら)……僕みたいな、なんにも知らない、こんなバカにだって出来るんですから、ほかの人に、やれないワケは――
人見 君が実行したために、君のお父さんは死んだ。明君は苦しんで、ヤケになって、戦死した。そいから私なども、ずいぶん――いや、私の事など、なんでもないが――それから、ヤミや不正は絶対にしないという君の行き方のために、君のお母さんも――肺炎だというけど、ホントは栄養不良が原因しているんじゃないかね? ――そんなふうな、それは或る意味で――自分の信念を生かすという事はけっこうだけど、その事だけのために、他の人をみんなギセイにするという意味で、それにエゴイズムともいえない事はないんだから――
友吉 ええ、それは、あの――(人見の言葉で打ちくだかれ、にぎりしめた両手をブルブルとふるわせ、やがて、イスからすべり落ちて、ユカに膝を突く)
木山 ……(しんけんに)片倉さん! しかしですねえ、自分がですねえ――つまり、自分の国が、いくらそんな気もちになってもですねえ、向うの相手が、相手の国が、あくまでガンコに自分だけの意見を押し通そうとする場合は、それでは、どうしたらよいのですか?
友吉 え? ……(膝を
前へ
次へ
全90ページ中83ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング