人でかね……あちらに親戚でも有るのかね?」
スミ「へえ。……いいえ……」益々ドギマギする。
旅商人「すると、御一緒かね?」と言つてお若を見やる。と、お若は腰掛けに置いた包みの上に突伏してゐる。
スミ見てゐてから「あんた気分でも悪いのかね?」と肩に手を置く。
お若ハツと起き直る。しかし顔を差し覗いてゐるのが親切さうなスミであるのを知つて、悲しげに微笑む。「……」
「気分でも良く無えの?」
「いいえ、あんでも無い。ありがたう」
二人の若い娘の間にかもし出されるシミジミとした同情と感謝の気分。
旅商人「あすこに連れられて行くのは、もしかすると、C村の放火をしたと言ふ犯人では無えかな?」
その言葉で、先づお若が、次にスミが旅商人を見詰める。
しばらくして、寝てゐた土方がノツソリ起きて、旅商人を見る。冷酷な獣の様な眼である。
旅商人「いえさ、あれがよ」
スミ、駅長室を見る。土方もその方を見る。――ヂツと見詰めてゐる。
お若は旅商人を見てゐる――「いいえ、違ひます。信太郎さんは、そんな大それた事をする人ではありません!」
その声に、駅長室を見詰めてゐた土方がお若
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