食はれておつ死んだ時、来たきりぢや。此の村さ電報来んのそれ以来だ」
「なんせロクな事あ無えぞな。電報来るようでは、もうはあ、彦之丞がとこも永え事は無えぞ」
「大水が出たのか? 戦争け?」これは駆け付けて来た男。
「あんだ、あんだ?」
「彦之丞がどうしたと?」とスツトンキヨーな声をあげたのはツンボの爺さん。
「電報が来たとよ!」
「雹《ひよう》が降つたのか? そいつは困つたのう」
「違う、電報じや」
「コロの値が出んのか? それはおいねえ!」
「まだ聞えねえ。電報だつ!」
「デンピだと?」
「電報つ!」
「デンピヨーかつ! ウーン」――爺さんが目をまはしかける。泳ぐ。

○それを追つてパンすると、中景に道路一杯に右往左往してゐる豚の群。
  その群の中に取りかこまれ、歩き悩んでゐる電報配達夫。カメラそれに近づく。

○親豚子豚とりまぜてヒシヒシと動きまはつてゐる。
 ブウブウ、ギイギイ、キユーツと鳴声。
「わーい!」配達夫叫んで、自転車を引きずる様にして、豚の背の波を踏み越え、すべり越えてメチヤメチヤに走り出す。
 しかし豚の群も同方向に向つて歩いてゐるので、なかなか抜け出られない。「助
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