に引合わせてくれた……そう言ったような……なにか、これでいいと言う気がしました。
百姓 さうかえ……うむ……おふくろさんを、そんなに、なあ……(もう涙ぐんでいる。涙でケースがよく見えないので指で眼尻を拭く)
青年 (微笑)それから、なんだか、ひどく安心しました。……帝国、万才だと思いました。……実は、その道具は、母が自分の父の所にかたづいて[#「かたづいて」は底本では「かたずいて」]来る時に、母の母が――つまり私のおばあさんが、母に買ってくれたものだそうで、母は大事にしていましたが、自分が最後に富士見に見舞いに来た時に、呉れました。……だいぶ役に立ちましたが、……今度船に乗れば、多分、もう要らんだろう――いえ、持っていて、なくしても詰らないですから、おばあさんにあげるんです。チットも遠慮はいりませんから――
百姓 ……名前は何と言いやす?
青年 自分は藤堂と言います。
百姓 おふくろさんはえ?
青年 ……母はフサと言いました。
百姓 おフサさんかえ……ふむ……(マジマジとケースを見ている)見たからず……なんぼう、そんなに大きくなったお前さまを、おフサさん、見たからず。……へえ、母親の気
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