ている俺達の数よりも何層倍も多いわい。一々たたったりしていた日にゃ、仏様同志で鉢合せすらあ。
女 ハハ……(笑いながら立上ってフロシキをたたみ、立去る仕度をする、青年も笑い出している)
百姓 フフ……(笑っている女と青年を、ずるそうな表情で見くらべながら)そうだらず? 大体、俺が始終言ってる。あんなおがみやなんぞの、もったいぶった、むつかしげな小理屈なんぞに、煙に巻かれるのが悪いだ。……世間の事だって、人間の身体にしたって、へえ、そんな小むずかしげな物であろかい。みんな、タンボや畑の事と同じよ。こやしを程々にくれて、手入れをまめにしていりゃ、成り物あチャンと出来らあ。こやしをやり過ぎて、根が煮えるとイモチが出る。こやしを惜しんで手入れを怠っていりゃシイラが出らあ。わかりきっているだ。地めんは正直だあ。論法通りに行かあ。へえ、ホントの理屈なんてもなあ、そんなしちめんどうなもんで無えさ。一年生が見ても、わかりきってら。……そのわかりきっている事を、いろいろにひねくり廻す奴が段々事をむずかしくしてしまうのよ。ハハハハ(哄笑)んだから、この前も、俺が言った。腸が悪いんだら、悪いように、そんな拝
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