、当分、実行組合でみんなでやりやす。
中年 ……ふーむ、……んでも、やりやすと、大きに、ばさまだけでそう決めこんでいても、なにせ、どこの家でも手一杯のギリギリまでやってるだから、下手あすると、村中の段取りがガタガタにならあ。
百姓 みんなが駄目だら、おらがやる。……(淡々として言い放って又、麦こきにかかる)
中年 どうも、へえ……その……(百姓の言葉や態度の中には、何一つ烈しい所は無いが、もうこうなれば、却ってその淡々とした中に抗弁しがたい物が有るらしい。それをよく知っているので、ホッとすると同時に、言葉のつぎ穂を失って、頭を掻きながら、ボンヤリ百姓の麦こきの手元を見守っている)ふう……。
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(こちらでは青年が二人のやりとりを眺めている。若い女は枯草や小枝に火をつけ、そこらに転がっていた竹の三本足にヤカンをつるして、火をかけ、その火尻を吹いたり、燃えるものをつぎ足したりしている。微風のために一方に流れて行く白い煙)
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百姓 ……(ヒョイと中年男を横眼で見てニコニコして)国三さ、お前、そうしてポカンとして……仕事は無えだか?
中年 (びっくり
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