知で、どうでも行くと言って聞かねえんだから、組内でも、へえ、どうにもこうにもアグネ切って――
百姓 国三さ……米あ今、一粒でも二粒でも、よけいに作らざならねえづら?
中年 そ、そりゃ、この際じゃから、勿論――
百姓 虫のせいやカンのせいでは、無えづら。ウヌが儲けようと言うでも無え。
中年 勿論そりゃ、お国で、どうしても要るだから――
百姓 そうづら? そんだら話あ、わかってら。
中年 それがさ、喜十が、あんとしても――
百姓 ハハ、喜十がとこへは、今晩、俺が行くべし。
中年 へえ! ばさま行ってくれるかえ? そうか、そうして貰えりゃ、もうへえ……こんなありがてえ事あ無え。そうかい、そんじゃ、そんな風に頼んます。へえ、そうしてくれれば――
百姓 どうでも苦しいと言うんだら、須山さんの旦那のとこ俺が出向いて、年貢を二三年まけてくれるように頼んで見るべ。
中年 そりゃ……へえ、それだと部落会の方からも俺達一緒に行ってもようがす。旦那の方でそれ聞いてくれ、喜十も考え直すことになりゃ、あっちもこっちも丸く行かあ。
百姓 もし、へえ、どうしても、喜十も聞かねえ、旦那も聞かねえとなったら、あのタンボ
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