む手附きを無意識にやりながら、語られている問題を考えているのか考えていないのか、遠くを見ている……)
中年 ……(落着いて、煙管に煙草を詰め代え[#「詰め代え」は底本では「詰め代へ」]ながら、百姓の横顔を見ている。……青年は先程から握り飯を食べながら此の場の話に耳を傾けていたが、話の筋道はよくのみこめないながら、重要な話であることはわかるだけに、百姓が黙り込んでポカンとなってしまったことも、それを黙って待っている中年男の様子も、少し腑に落ちぬため、二人を見くらべている)
百姓 うむ……(とうとう返事はしないで、フと若い女の方へ眼を移し)シゲ……お前は、また、なんの話だあ?
女 ……わしあ、後で、なにするから――(下げて来たフロシキ包みを解き、中から新聞紙に包んだ白い丸い物をいくつか出して、草上にひろげる)少しばかし拵えて来たから……へえ、ソバ粉が残りもんで、うまかあ無えけど……
百姓 そうかい、そいつは御馳走だ。(丸い大きなダンゴの様なものを一つ掴み取って、紙を中年男の方へ押しやる)
中年 へえ、今頃、ソバのおヤキは珍らしいな。(遠慮なくこれも一つを取って食う。相談事などは何処かへ行っ
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