十七んときです。
百姓 今、いくつになりやした?
青年 僕ですか?……二十六です。……どうも、ハハハ。……(困って、手持ぶさたで、積んである麦束に近づき[#「近づき」は底本では「近ずき」]、なんとなく、麦束を取り上げ、それをこく真似をする。次ぎにホントにこいで見る気になって、踏板をしっかり踏んで、ブリブリとこく)
百姓 ……(その姿を、まだ見ている)
青年 ……(相手の視線を無視して、一束こき終った時に、右のズボンのポケットにゴロゴロする物が邪魔になるのに気付き、それを取り出すと、紙袋に入った飴玉)
百姓 ……さぞ、なあ。
青年 ……(百姓の方へ寄って行き)これ、残りもんですが……(自分で紙袋から飴玉を一つ出して、百姓に渡す)
百姓 う?……(別のことを思っているので、ウッカリしたまま手を出して受取る)……なんだ?
青年 ……(紙袋の方も渡して、百姓の手元を見ている)
百姓 そりゃ、へえ……ごっつおさまだ。(無造作にポイと飴玉を口に入れる)
青年 その手……指は、どうしました?
百姓 うん?……(チラッと自分の手を見てから)うむ、……ヒビやアカギレだらず……年中、こうだ。……あに、へえ
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