、いくらうまくやっても悪い年も有る……こんで、だから、作が良くっても俺たちゃあ、それほど喜こびもしねえし、悪くたって、それほどしょげ返りもしねえですよ。……二年三年位じゃ、泣いたり笑ったりも出来ようが……こんで十年の間をならして見ると、良えも悪いもねえ、毎年同じだあ。
青年 ……(なんの気もなくポツリポツリと語りながら、休まず急がず麦こき進んで行く相手の横顔を見守っている)
百姓 ……やれ、どっこいしょと、……ほう、少し風が出て来た。丁度、叩いてすます頃にゃ、ええあんべえの風にならす……(麦をこき落しながら、無意識に鼻歌が出て来る)
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(間)
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青年 ……なんの歌です?
百姓 あんだえ?
青年 その歌は、なんという歌ですか?
百姓 歌?……なんの歌だ?……
青年 ……先刻も小母さん歌っていた……?
百姓 おらがかえ?……(少しびっくりして青年を見てから、頤を引いて、自分の胸や左右の肩のあたりをキョトキョト[#「キョトキョト」は底本では「キョトキトョ」]見まわす)
青年 ……もっと大きな声で歌って聞かせてくれませんか?
百姓 ……(更に青年の
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