政六年及び七年に、常陸國沖合にあらはれた捕鯨船についてみると、六、七隻の異國船はまつたく食糧薪水に缺乏してゐて、手眞似をもつて意志を通じながら、附近の沖合にゐた水戸の漁夫たちと、ヨーロツパ雜貨と、米や煙草などと交換した。漁夫たちは親しく異國船に招待されて、珍奇な外國の風俗や品々におどろいたが、噂は忽ち漁村から町方までひろがつて、こんどは漁夫を通じて交易せんとする商人が續出した。水戸藩廳ではおどろいて商人、漁夫ら三百餘人を捕へたが、異國船はもはや食糧薪水を得たためか間もなく沖合から姿を消してしまつた。ところが翌年漂着した二隻の捕鯨船は、もはや日本の漁夫らと交易して薪水をうることが出來ないので、ボート四隻で大津濱に上陸、十六名は武裝してゐたが、水戸藩吏に捕へられた。のち取調によつて、食糧補給以外他意なきこと判明したので、釋放されたが、一時は沖合に待機してゐた本船から大砲をうちかけてくる騷ぎであつたといふ。同じ年薩摩領寶島でも、上陸してきたイギリス漁夫たちは、火酒やパン、貨幣などみせて、畑にゐる牛をもとめたが、拒絶されるとこんどはボート三隻に二十名が武裝上陸、本船から掩護砲撃下に畑の牛を掠奪
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