る。
 史家たちは今日も、ロシヤ政府がレザノフの計畫に承認を與へなかつた事情、また不承認を知りながら計畫をすすめ、しかも遠征出發の直前になつて、雲がくれして行衞不明となつたレザノフの曖昧な行動について、決定的な判斷を與へることが出來ないでゐる。そこで私は私なりに考へるのだが、尠くともこのレザノフの曖昧な行動に、ロシヤ政府と露米會社の關係が物語られてゐる氣がするのだ。つまり英、蘭等よりも遲れて資本主義化しつつあつたロシヤ政府の出店、露米會社の性格があるのではないか。ピヨトル大帝以來の對日方針はまだ生きてゐて、イギリス政府とイギリス東印度會社の關係のやうにはてきぱきとゆかぬのではないか。しかもレザノフとしてみれば、十九世紀初頭以來露米會社獨占の北氷洋毛皮業は、向ふみずなヤンキーたちによつて急速に侵蝕されつつあつたし、千島列島を南下する植民政策も、却つて人口稠密な日本側からの移住者によつて壓倒されてゐた。しかし彼は、露米會社二代目支配者として、ヨーロツパにある株主のためにも局面を打開しなければならなかつたのである。オホツクから澳門への最短航路を拓くこと、「鎖されたる國」の扉をむりにでもこじ開
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