ほかの街を羨やむためのヴィレーヂだった。フロイドも、御多聞に洩れず、そのまん中へんのマグドウガル・ストリートの二十七番地の、第一階に住んでいた。ノックして、はいると、細長い部屋に、細長いテーブルがあって、その上には手擦れのしたタイプライタアがのっていて、主人公は、その奥からむっとするほど部屋に溜った、ファテマの煙を呑吐しておった。
『Hallo Mr. Dell, I am glad to see you again. I just came to New York yesterday.』
『Oh Maidako, so you are here at last. Come in and sit down.』
二人は握手して、互いに微笑み交わした。
瘠せ型のフロイドは、一層と瘠せ細ってみえた。
『Well, how is everything? Are you working hard?』
『Oh, just so and so.――How about you?』
『I am to see the city first, and then I will drop in the ed
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