行った。編集者のフランク・ハリス君は在社であった。ここでは、Joint editorship というのであろう、フランク・ハリスのような人が幾人もいて、各自に受持の分担をやっているらしかった。会うと、温厚な、いかにも口数のすくない人で、一応フロイドと私との交際のことなど訊ねたのち、日本の文壇の近状など――と云って、私には雑誌で知っただけのものだが、それを書けるかときいた。私は、社会党の週刊誌やプログレッシヴ・ウイメンやゼ・インターナショナルのことをかいつまんで話をし、ともかく最善を試みてみることにして、タイプライタア用紙に十二枚程度という約束をして、ニュー・レパブリック社を辞した。
 それから三日たって、私はタイプで書いた十二枚の原稿を社へ持って行くと、ハリス君は読んで
『Can I do anything else?』
『Well, why not see the city, and sketch around the scenes and other matters, such as the Fifth avenue and the status of Liberty? There
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