will be an interesting article if you see it from an original and unique point.』
『I will try.』
そのときは、嬉しさでこおどりする気持で、エリック方へ取ってかえした。ちょうど五十六丁目の日蔭の街を歩いていると、向う側からさむざむとした恰好をした、木元のやって来るのに出遇わした。
『やあ、こないだはどうも。すこし酔っていたもんでね。』
『こっちも言葉が荒かったが――今日は、これみてくれよ、ニュー・レパブリック社からもらって来たのだが、』
私は、さっそく八十五ドルの小切手を、彼の眼の前に閃めかしてみせた。
『うへえ――すばらしいもんだね、そりゃ銀行の小切手じゃないか……』
『このうち、君へ二十ドルだけ進呈するよ。それにこの俺の着ている外套な、これも君にあげるよ、こうさむくちゃ外出もできないだろう。』
『うへッ、何とまがいいんだろう。ともかく、僕の宿で一杯やろう。』
二人の脚は、小もどりして、いつのまにか鶴亀まで歩いていた。行きずりに会った男といっても、多少なりと辰野の息のかかっていた木元である。まんざらみごろしにもできない気持がしたのであった。二人は、この前と同じテーブルにむかって掛けた。
底本:「日本の名随筆 別巻31 留学」作品社
1993(平成5)年9月25日第1刷発行
底本の親本:「青春の自画像」理論社
1958(昭和33)年5月発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2007年12月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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