御意なのかい?」
「いいえ」と弟、――「マーシャには五万だけやって置けというんです。そこで僕はこう言いました。
 ――ねえ、ニコライ・イヴァーノヴィチ、これは少々もったいな過ぎますよ。……マーシャにしてみれば、あなたから持参金を頂いたりして、却ってくすぐったい思いがしましょうし、姉さんたちがまた――いや、こいつはいけません。……これじゃきっと姉さんたちがあれを妬いて、仲たがいの因になりますよ。……そうなっては困ります、姉さんたちの仕合わせもお考えになってください、どうぞこのお金は一応お納めくだすって……いずれそのうち、何かいい風の吹きまわしで、あなたと姉さんたちの間のこだわりが解けほぐれたとき、三人に[#「三人に」に傍点]等分に分けてやってください。その暁にこそ、このお金はわれわれ一同に、悦びをもたらしてくれるというものです。……どうしても僕たちにだけと仰しゃるのでしたら、失礼ながらお断わりします[#「お断わりします」に傍点]!』
 すると親父さんは立ちあがって、またもや一わたり部屋の中を歩きまわったが、やがて寝室のドアの前に立ちどまると、大声で、
 ――マーシャ!』と呼びました。
 
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