に集まった。全身あぶら汗と血にまみれて、彼は黒い処刑台から下りるとき何べんか前へのめったが、カテリーナ・リヴォーヴナは落着きはらって下りてきた。ただ厚地の肌着と、ごわごわした囚人外套が、なま傷だらけの自分の背中にへばり着かぬように気をくばっていただけのことだった。
監獄病院で、生まれ落ちた赤んぼを渡された時でさえ、彼女は『ふん、もう用無しだわ!』と言ったきり、くるりと壁の方へ寝がえりを打って、うめき声一つ、泣きごと一つ立てるではなしに、ごつごつした板どこに胸をぶつけるように倒れたのだった。
※[#ローマ数字13、89−5]
セルゲイとカテリーナ・リヴォーヴナの加わった囚人隊の出発は、春といってもほんの暦の上だけのことで、太陽がまだ下世話にいうとおり、『ぎらぎらしちゃ来たが、まだぽかぽかして来ねえ』頃のことになった。
カテリーナ・リヴォーヴナの生んだ子の養育は、ボリース・チモフェーイチの従妹にあたる例の婆さんにまかされた。罪の女の殺された良人の嫡男と認められた以上、この子は今やイズマイロフ家の全財産を相続すべき唯ひとりの人物となったわけである。カテリーナ・リヴォーヴ
前へ
次へ
全124ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
レスコーフ ニコライ・セミョーノヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング