病人の眼からさえぎるような恰好で、ベッドの前に立ちふさがった。――「もうお寝なさい」と、すぐまた続けて彼女は少年に言った。
「だっておばさん、ぼく睡くないもの。」
「いいえ、フェージャ、いい子だからもうお寝なさい……時刻ですよ……もうお寝なさい」とカテリーナ・リヴォーヴナはくり返した。
「どうしてなの、おばさん! 僕ちっとも睡くないのにさ。」
「いいえ、寝なくちゃ駄目、寝なくちゃ駄目」と、カテリーナ・リヴォーヴナは又しても声変りのした、おどおど声でくり返しざま、少年の腋の下をかかえて、むりやり枕につかせた。
 その瞬間、フェージャは狂気のような悲鳴をあげた。まっ蒼な顔をして跣足ではいって来たセルゲイを、少年は見たのである。
 カテリーナ・リヴォーヴナは自分の手の平でもって、おびえあがった子供が恐怖のあまり開けた口をふさいで、こう叫んだ。――
「さ、早くおし。しっかり抑えて、じたばたさせるじゃないよ!」
 セルゲイがフェージャの両手両足をつかまえると、カテリーナ・リヴォーヴナはあっという間もない早業で、受難のあどけない小さな顔を大きな羽根枕でふさいで、その上から自分のぴちぴちした硬い胸で
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