ードル・ザハーロフ・リャーミンという未成年者の金が、じつは彼自身の金よりも多く混っていたものであるから、この事業は一応せんぎを要すべく、カテリーナ・リヴォーヴナ一個の手に帰せしむべきではない、というのであった。この注進が舞いこんで、町長はそのことをカテリーナ・リヴォーヴナの耳に一先ず入れたのだったが、驚くなかれ一週間後にはなんと、遥々リーヴンくんだりから、婆さんが年端もゆかぬ少年をたずさえて、ひょっこり到着したのである。
「わたしはね、亡くなったボリース・チモフェーイチの従妹でしてね、この子はわたしの甥のフョードル・リャーミンでござんす」――という挨拶。
 カテリーナ・リヴォーヴナは二人を中へとおした。
 両人が到着するとから、カテリーナ・リヴォーヴナが中へ通すまで、一部始終をうかがっていたセルゲイの顔は、ハンカチのようにまっ蒼になった。
「どうかしたの?」――お客さんのあとから彼がはいって来て、じろじろ二人の様子を眺めながら控室に立ちどまった時、その死人のような色の蒼さを見て、おかみさんが尋ねた。
「いいやべつに」と、控室から玄関へ引き返しながら、番頭は答えた。――「ただね、このリー
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