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 蝋燭を吹き消して、肌着もなにもすっぽり脱ぎすてて、ふかふかした羽根ぶとんへもぐり込むが早いか、カテリーナ・リヴォーヴナは忽ちもう、正体もなく寝こけてしまった。なにしろ、さんざんふざけ抜き、いちゃつき抜いたあげくの果てだから、カテリーナ・リヴォーヴナの眠りの深いことといったら、足もぐっすり寝ていれば、手もぐっすり寝ているといった塩梅だった。ところが、まもなく彼女は、またもやドアがそっとあいて、さっきの猫がどさりと古靴かなんぞのように寝床の上へ落ちた気配を、夢うつつのうちに聞いたのである。
『ほんとに、なんてまあ忌々しい猫だろうねえ?』と、へとへとのカテリーナ・リヴォーヴナは思案するのだった。――『今度はあたし、わざわざ自分のこの手でドアの鍵をかけておいたし、窓もしまっている。だのにまたやって来たわ。よおし、さっさと追ん出しちまおう』と、カテリーナ・リヴォーヴナは起きようとしたが、ねぼけた手や足が言うことをきかない。そのまにも猫は彼女のからだの上を所きらわず歩きまわり、何やら奇妙な鳴き声をたてるのだったが、それがまたもや、まるで人間が口をきいているみたいに聞える。しまい
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