らずじっと彼を見つめて、唇をふるわしていた。セルゲイの下卑た長広舌の合間合間に、彼女の耳には、かっと口をあいたりまた閉まったりする川浪のなかから、唸り声や呻き声がきこえてくるのだった。と突然、ざざーッと崩れかかった浪がしらの中から、ボリース・チモフェーイチ老人の蒼い顔が現われたかと思うと、つづく波間からは、うなだれたフェージャを抱きしめた良人のすがたが、ひょいと覗いてゆらゆらした。カテリーナ・リヴォーヴナは祈祷の文句を思いだそうとして唇を動かしたが、その唇はわれにもあらず、「お互い仲よく遊び※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りもしたし、秋の夜長をしんみり語り明かしたこともあるじゃねえか。むごい殺し方をして、身うちの誰かれをあの世にお送り申したこともあるじゃねえか」――と、ささやくのだった。
カテリーナ・リヴォーヴナはわなわなと震えた。それまで定まらなかった彼女の眼ざしは、しだいに据わりはじめて、兇暴な色を帯びてきた。両の腕が一ぺん二へん、当てどもなく中有にさしのべられたが、またがくりと落ちた。また暫くすると――不意にその全身がふらつきだして、暗い波の面にじっと見入ったまま、前
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