らなあ、そうなりゃあ、これほどのお悩みもあるめえにさ」と彼が言葉をつづけた。
 カテリーナ・リヴォーヴナは、はっと目が覚めたみたいだった。
「まむし、毒へび!」と、彼女は堪忍ぶくろの緒を切らして口ばしった、――「笑いたいならいくらでもお笑い、まむしめ!」
「いいや、俺あね、おかみさん、何も笑うのなんのって言う段じゃないんだぜ。ただねこのソネートカの奴がとても上等な靴下を売りたがってるんでね、そこで一つ、おかみさんそれを買ったらどうだろうと、こう思っただけなんだがね。」
 おおぜいしてドッと笑った。カテリーナ・リヴォーヴナは、ゼンマイ仕掛の自動人形みたいに歩いていた。
 天気はますます悪くなって来た。空をおおっている灰色の雲から、水気の多いぼた雪が落ちはじめて、地面にふれるかふれないうちに融けては、底なしのぬかるみを益※[#二の字点、1−2−22]ふかくした。とうとう行く手に、どんよりと鉛いろをした帯が見えはじめた。その向う側は見わけがつかない。この帯がつまり、ヴォルガ河だった。ヴォルガの上には風が吹き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]って、ゆっくりと大きな口をあけてもちあがる暗
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