いるみたいな様子でしたよ。」
手みじかにいえば、かもじの美術家は美男子で、「みんなに[#「みんなに」に傍点]好かれていた」ということになる。「当の伯爵までが」やはり彼に目をかけて、「人並みはずれた扱いぶりで、りっぱな身なりをさせていたけれど、その一方ではきびしくその身を見張っていた」のだった。どんなことがあろうと、アルカージイが伯爵以外の人の髪を刈ったり、ひげを剃ったり、髪を調えたりすることを許さず、そんなわけで二六時ちゅう[#「二六時ちゅう」に傍点]彼を自身の化粧部屋に釘づけにしていたので、アルカージイは劇場へ行くほかには、どこへも外出できない身の上だった。
そればかりか、教会へ懺悔をしに行くことも、聖餐にあずかりに行くことも許されなかった。というのは伯爵自身が神を信じない人で、坊さんには我慢のならぬたちだったからである。一度などは復活祭のとき、十字架をささげて托鉢に来たボリソグレーブスクの坊さんたちに、ボルゾイ犬の群をけしかけたことさえあった*。
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*この出来事を知っている人はオリョールに大ぜいいる。わたしはこの話を祖母のアルフェーリエヴァからも聞き、ま
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