身の文句や、むずかしい文学の歌に間に合せなふしを付けたようなものくらいで、簡単にあっさり追払われるような、そんな根底の浅いものでない。
ニッポンの流行唄はニッポン語で唄われる。――そういったら読者諸君はそんな事はわかり切っていると怒るかもしれないが、しかし必ずしもそれはわかり切っているとばかりは言われない。そしてこの辺で話が多少面倒になって、注文の随筆という事からは、あるいは流行唄と国民歌謡ぐらいのへだたりが出来るかもしれない。
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ニッポンの流行唄はニッポン語で唄われる。ニッポン語の性質からひどく離れたものは私共になつかしみを感じさせにくい。例えば世界的に有名な流行唄『暗い日曜日』は私が確に一番美しい、一番おもしろいと思った曲の一つである。私はあの曲に気品をさえ感じる。しかしそれをニッポン語で唄うと何となくおかしい。不自然である。フランス語で聞く美しさの半分以上はなくなる。やはりニッポンの流行唄はニッポンの言葉にあったニッポンのふしでなくては本当には成立しない。この事が学校唱歌だの国民歌謡だのいうような西洋音楽の組織を基礎にした曲が、心底から私共大衆の感情になずま
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