るという大活劇がくり広げられて行く。僕はボール紙に金紙をはり、それにわからぬアルハベットをつづり二つに切って近所の悪たれ坊主連中と名金ごっこをしたのはなつかしい想い出である。グレース・カーナド出演映画は「獣魂」なぞ陸続と現れ、冒険心に満ちていた少年の僕を人生の楽しみとまでしみ込ましたのである。
 その頃、グレス・ダーモンドという眼の美しい日本人好みの女優の「赤い目」という連続映画が登場し、二巻目の終りに両眼が恐ろしいまでクローズ・アップされ、その眼球だけ赤色がルビーのように染められていたのには驚異であった。
 幸い両親が新しい物好きで、僕の映画愛好に、むしろ賛成であったのは僕の大なる幸福であったのであろう。
 次に僕を真髄まで映画ファンにしてしまったのは、パール・ホワイトである。先日もベティ・ハットンの「ポーリンの冒険」で私はなにか涙をもよおすほど自分の若き少年の頃を思い起して胸のあつくなるおもいであった。そのほほの色まで感じさせる明眸のパールが耳かくしの金髪に胸のふくらみを白いブラウスに包み、腰のあたりがキュウーと張ち切れそうな長靴姿には、僕はあの真暗な客席でほほを赤らめ面はずかしげ
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