客様にサービスをしてあげて下さい。では皆さん乾盃いたしましょう」
社長のあいさつと共に無礼講の膝小僧がくずれたのである。
美妓のお酌に盃は廻され、その飲みっぷりの美事なこと、赤い唇にグイグイと酒は流れ込む。早や上気してあつい息をはくのはナオミさん、髪をバッサリ振って眼もとを桜色にポーとさせたのはマヤさん、襟元がくずれて水色のシュミーズが顔を出したのがシルバーさん、皆さんどうも肉体に何かまとっているのは生れつき御気にめさぬらしい。
女性の飲みっぷりというのは、男性とちがってチビリチビリ味わうといった風でなく、まして今夜のように十八から二十一、二の娘盛りは酒に酔うという尺度なぞ決して考えに入れていない。いや、もーひやひやと心配になるのは私だけではない、お隣りの尾崎士郎さんも大切な器が碎けるのを見るようにひどく心配顔である。
浴衣一枚に紅のしごき、のぞき出た餅の肌はちらりちらり、紅に散って五彩の虹、さしもの大広間は花のこぼれるような酔女の群。どっと我慢のせきが切れてやわ肌は時ならぬうずきを見せてとろけるまなざし、一せいに男側をねめつけて、
ヤー ホー
とばかり立ちあがり、しどろに
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