舞台の垢をふるい落し、小うるさいバタフライをさらりと投げすて、心の向くまましたいざんまい、ざっくばらんの無礼講、伊豆の伊東の温泉しぶきに日頃の欝憤厄落し、裸女姫の一大饗宴が開かれると云う、悪くないぞえ、おっしゃる通りの女護島、ここ一番度胸をすえて女身の祭礼に身を投じようではないか、とここに一大決心をしたのである。
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東海道は日本晴れ、伊豆、伊東行き温泉特急はフル・スピード、浅草にその名を知られたストリップ劇場、浅草座、美人座の、ピチピチとした生きのよいストリップ・スター諸嬢に、演出、照明、舞台美術、マネージャーに振附け師、社長を入れて五十数名、にぎわしく車内におさまっている。日頃は舞台でバタフライをチョッピリ附けただけの彼女達が、今日は思い思いのドレスにぴったり姿体をつつんで、帽子なぞをまぶかにかぶっているので、どれがシルバーローズか、マリヤ・マリーかわからない。車窓から流れ込む初夏の風にパーマネントの髪をなびかしている、これが有名なストリッパーの大グループとは誰が思おうぞ、ドレス・メーカーの春の旅行といった姿である。隣りに乗り込んだ何かわからぬ小旗を振る団体は、
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