ているんだ、今夜は、ぎゃくに男性を裸にしてしまうんだと、ワァーとあつまって来てアレヨアレヨと云うまに素っ裸にされちまうんですよ。まったくこっちはたまりませんや、抵抗するのでYシャツやパンツは、ずたずたに破かれましてな、その用意にこれこの通りなんですよ」
 ぎょっとして、彼女達をあらためてながめ廻すと、ボンボンをしゃぶったり、チュウインガムを伸したり、読書にふけったり、あいかわらず静かなのですが、なんとなく、原爆の破裂する寸前のようなぶきみさを感じるのは、あのいたずらっぽい瞳のせいであろうか。その時である。ワァーという歓声と共にお隣りなる団体、温泉につかぬうちからモー一升壜がずんずんとあけられ、電車の動揺に酔いのあふりを喰ったかはやみだれて唱いわめく男女、中でも主人格のマダムが手拍子に浮かれてエイヤサッと踊り出したが、何んとこれが、器用にワンピースをぬぎ、スリップをぬぎ、アレヨアレヨと思う間もなく、ヅROス一つのストリップ。はずみ上る乳房の乱舞。アッ!と驚く本物のストリッパー連、
「アーラ物すごい、すっかりお株を取られちゃったわ」
 と鳴りを沈めてびっくり仰天、どぎもをぬかれながら温泉特急は伊豆の駅についたのでした。

       3

 空は青空、温泉街はしごくのどか、湯の町エレジーがのんびりと流れてくる。ワイワイはしゃぐ劇場連を迎えの自動車に送って、こちらは散歩。土産店の前でバッタリ会ったのが伊東の住人尾崎士郎先生、いったい今頃どうしたわけかと不思議そう。実はストリップ・ガールの大宴会がありまして、それに客分として参加するしだいを申しますと、そんな面白いものなら是非僕も仲間に入れてもらいたい、僕はストリップというものをついぞ一度も見たことがない、願ってもないよい機会にめぐり会ったものだ、是非是非との事で、こちらは一人でも味方のほしい、ではYシャツを一つ御用意願いましてということにあいなった。

       4

 鮎が住むという松川の河畔なる温泉旅館松川館の大玄関には、浅草座美人座御連中、の立看板が湯客の眼を引いていた。内には鮎よりピチピチした彼女達が湯にほてったからだを浴衣に包んで色めきたち、サリー、ジーン、セーラ、滝、シルバーなぞ名の張られた客間がずういとならび、嵐の前の静けさである。さて定刻の六時となれば、熱帯の花が競うよう、陸続と彼女達は大広間に現れ、いよいよ女護島の幕は切って落されたのである。社長を上座に、ぐるっと大円陣の前には酒さかなの美事な膳部がならべられ、自慢の肉体をお揃いの浴衣ににおわし膝をそろえた盛大さは、さながら女親分の総会もかくやあらんというありさま。
「さて皆様、いつも御無理をお願いするにもかかわらず、熱心に舞台を御つとめ下さいましてありがとうございます。本日はこのようなささやかなおもてなしでございますが、吉例によりまして皆さんと大いに愉快な舞台をはなれて楽しい一夜をすごしたいと思います。いつも皆さんは、裸にばかりなっておられるので今宵だけはどうか湯の街の綺麗どころの三味線がなりましても、大切に身体をしまっておいていただきたい」
 ……ヨウヨウそのかわり男性は裸になってサービスウ……と拍手が起る。
「どうかいつもきゅうくつにはめておられるバタフライを、今夜はおとりになって心おきなくゆっくりとおくつろぎ下さい。これは心ばかりの本日の贈りものですが」
 と大入袋がめいめいにくばられた。
「お酒もビールも充分に用意してありますから、どうか不夜城のつもりで大いにやって下さい、そして、又明日から舞台で大いに色っぽいところをお客様にサービスをしてあげて下さい。では皆さん乾盃いたしましょう」
 社長のあいさつと共に無礼講の膝小僧がくずれたのである。
 美妓のお酌に盃は廻され、その飲みっぷりの美事なこと、赤い唇にグイグイと酒は流れ込む。早や上気してあつい息をはくのはナオミさん、髪をバッサリ振って眼もとを桜色にポーとさせたのはマヤさん、襟元がくずれて水色のシュミーズが顔を出したのがシルバーさん、皆さんどうも肉体に何かまとっているのは生れつき御気にめさぬらしい。
 女性の飲みっぷりというのは、男性とちがってチビリチビリ味わうといった風でなく、まして今夜のように十八から二十一、二の娘盛りは酒に酔うという尺度なぞ決して考えに入れていない。いや、もーひやひやと心配になるのは私だけではない、お隣りの尾崎士郎さんも大切な器が碎けるのを見るようにひどく心配顔である。
 浴衣一枚に紅のしごき、のぞき出た餅の肌はちらりちらり、紅に散って五彩の虹、さしもの大広間は花のこぼれるような酔女の群。どっと我慢のせきが切れてやわ肌は時ならぬうずきを見せてとろけるまなざし、一せいに男側をねめつけて、
 ヤー ホー
 とばかり立ちあがり、しどろに
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