それ一升ビン、それビールだ、酒のさかなだと、まるで華々しく、こちらの方がストリップ劇場グループではないかと最初はまちがえたくらいである。
「キミイー、ほんとかい、この姿は、まるでトラピスト修道院の修学旅行みたいじゃないか、それに洋服の好みも黒やグレーでまるで渋好みじゃないか、一体これは、びっくりするなアー」
と、まるで約束がちがうように嘆いた。
「ストリップ・ガールというとまるでものすごい女と、思っているのでしょう。大違いですよ、舞台ではあのようにオッパイをはずませたり、おしりを振ったり、そりゃあ、人みしりなんか一かけもありませんが、私生活は想像もつかぬ内気なものですよ、そんりゃそこいらのお嬢さんの方がずーっとものすごいですよ」
と、森マネージャーの弁解である。
「これでお宅の踊り子さん全部ですか」
「いや、よいところが二、三欠けておりますよ。何にしろこの温泉旅行が無軌道なもので、ついている男が心配ではなさないのですよ、それに一年にたった二回のお休みで、仲間どころか、二人でしん猫をきめこんで価千金というところでしょうなアー。無理もありませんや、十日変りの舞台のあいまに次の御稽古、徹夜こそすれ一年中休むひまがない、生活ですからなアー」
と、なかなかこの森さん人情家である。
「その男ていうのがすぐついてしまうのですかなアー」
「いや彼女達は特別純情派ですよ。すぐ情にほだされちまうんですなアー。それにストリッパーというものは、寿命が短いですよ、五年がせいぜいですなあー。この時代にうんと稼ごうとあせっています、内でも引っこぬきなんかされないように高給を無理していますよ。彼女達大した金のつかい道がないのでなかなかの金持ちですよ」
「そこで男道楽が始まるというわけなの」
「いやその彼女達はいつも束縛があるし、なにか自分で思いきりいうことを聞く、自由にしたいものがほしいのですよ。そこで何んでも自由になる男がほしい気持ちで金をつかうのですなアー」
と、森さんはYシャツの新しいやつを三枚ばかり出して、しわをのばし始めた。
「何んです、そんなにYシャツを用意して、まるで永の旅に出るようじゃありませんか、案外お洒落ですな、あんたは」
「いやーこれにはわけがありましてな、彼女達今夜の宴会から夜明けまで、そりゃ大変なのですよ、酒がまわるにつれて勇ましくなりまして、いつも私達は裸にされ
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