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私は、その甚だしきものだつた。たうとう学校へ行くのが苦痛になつた。皆のいふ言葉がわからないのと、乱暴なのは、私の学校嫌ひをます/\あふり立てる。その上に、自治精神を尊ぶ女子大から、強制……といふのかしら……従来の意味での、良妻賢母型にはめ込まうとするやうなS校への転校なんだから、私はクサつてしまつた。
「何々すべし、何々すべからず」学校の生活がすべて、この定規によつてあてはめられてゐる。頭の先から、爪の先までが、すべて規則でつくられてゐる。規則、規則、規則の一点張り……少くとも私にはさう見えた。
髪は三年以上のものはむすぶこと、上衣は長さ何センチ、スカートのひだはいくつ、靴下、カバンは黒、何んだ、かんだと微に入り細を穿つてゐる。規律、それは大切だ。多くの人が学校といふ一つの団体をなして、すゝまうとするのには秩序といふものが大事だ。規則も、とりしまりの為には必要だ。だが、それだけでいゝだらうか。
個々の創意を全然無視してもいゝだらうか。規則で全体を統一するのはよいが、規則が或る一部の違反者をとりしまる為にのみ、ふえて行くやうだと、規則は人の個性や創意を無視する、いはゆる、しばりすぎになる。
「悪くならない様に/\」と注意しすぎては、規則のレベルは段々低下して行くものだ。全体を統一するといふ意味で、性善説にあつた規則のレベルは、悪い者を出さぬために性悪説へと下つてしまふ。
「人間の性は悪なるもの……」として、最悪の場合まで用意しておけば、安全ではあらうが、進歩はないだらうと思ふ。最低の所へ行けば止まるかもしれぬが、それでは伸びようとする熱意、少しでも向上しようとする活力、といふか、生気といふか、さういふものの伸びる余地がない。
たとへて云ふなら「ハンケチは白の木綿たるべし……」といふ。皆が白をもつてゐれば、あんな規則は生れないですむ。だのに中の何人かゞいつまでも赤いハンケチを止めないから規則としてつくらねばならない。
すべての規則は、さういふ為におこなはれてゐる。私は、ヤケクソだつた上に生意気心をおこしたから、こんなにハツキリと――ではないが、S校のかういふ点に不満を抱いてゐた。学課は虎の巻をうつして行つて、お時間中黙つてきいて、試験の前には棒暗記さへすればいゝ。S校のやり方はさういふ式だつた。
私は前にも云ふ様に生意気で、悪いと思つたら、後先の分別もな
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