は、私さへ泣き出したくなつてしまつた。だけど私はお姉さんだ、私まで泣いたりしたらどんなに洋ちやんが心細いだらう、さう思つて
「大丈夫よ、だいぢよぶよ」とひきつる顔で無理に笑顔をしてみせた。
 しかし、その大丈夫といふのは、洋ちやんに対してといふよりは、むしろ自分自身へ言つてゐる様な声だつた。
「仕様がないから汽車がとまつたら降りませうね」と荷物をしらべて小さい軽いのを一つ洋ちやんにもつてもらひ、後の三つか四つを一まとめにして私がもつことにした。汽車はゴウ/\とすごい音をたてゝ走つてゐる。
 あかりがついてゐないから、真暗やみ、わづかに機関車がつけてゐるあかりが洩れて来るのと、後は沿線の電燈がパアーツ、パアーツと行きすぎにてらす位のものだ。
 洋ちやんは案外おちついてゐた。泣き出されでもしたらどうしようと内心ビク/\しながら、御機嫌をとつてゐたのだが、思ひの外落着いて黙つてゐる。二人は片手に荷物をおさへ、片手にお互ひの手をしつかり握つた。とまつたら、と全神経を一つにして待機してゐた。もう、そろ/\着きさうな時分だが、と思つてゐたら、あかりのあか/\とついた停車場を汽車は矢のやうにふつとば
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